備忘録金田一。 それは名探偵の系譜

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 それぞれが金字塔として


 小説と漫画に新風を起こした







今では誰でも知っているといえるほどの知名度を誇る物語
言ってしまえば金田一少年の事件簿は金田一耕助に便乗した…と言ってしまうことも出来るでしょうが、そこに描かれる金田一はじめの姿は確かに耕助の探偵像と重なるものがあると思えます。






【設定BGM:金田一少年の事件簿より『the mysterious mallets』】
アニメの次回予告とどちらにしようかと迷いました。本放送当時は震えながら見てたものです
学園七不思議は今みてもこえぇ!





舞台は閉じられた世界。扱うは凄惨を極める難事件。それに立ち向かう人物は…


惨劇とも言える連続殺人。異質な存在。特異な風習。閉じられた空間。それに立ち向かう名探偵は、見た目にも名探偵とは言いがいたい普通の人物。

今でこそおおよそのイメージというものが作られている「名探偵」の偶像。この二人はそれにややそぐわないキャラクターであると言わざるをえません。

金田一耕助の癖といえば考え事の髪を掻く癖。そして話す時の吃り癖です。お馴染みですね。髪は伸び放題。服装は書生服。拠点は間借りした私立探偵事務所。
一方はじめちゃんといえばスポーツ・学力ともにダメ。入学当時は開校以来の好成績でしたがいまとなっては落第寸前です。それを防ぐために何をやったかというとカンニング。だらしないヤツという印象を日々、同級生に植えつけています。
しかし一度事件が起これば、そこは持ち前の頭脳と推理力で難事件を解決に導きます。
周囲の手を借りながら。


「事件」に対する感じ方


耕助は探偵です。旅先の事件や依頼があれば平気で首を突っ込んでいきます。そこには多少の好奇心があり、事件の中にある要素を吟味するかのような解決の仕方をします。事件に関しては外側から事件をつまむような感覚であたり、積極的に止めようとは案外しないものです。
本気で殺人を止めようと思って事件に真摯にあたったのは、おそらく復員直後に死んだ戦友の頼むの下で訪れた獄門島とその他くらいです。彼は恩義や義理を重んずる。自分の立場というものを崩さない。


しかし、はじめは正確に言えば探偵ではありません。普通の高校生です。現代社会に揉まれ普通に育った男の子です。凄惨な事件に遭った時、もちろん衝撃を受けますし、これ以上の死があるならそれを全力で止めようとします。事件に対してそういう介入の仕方をする。少年なりの正義感をもって。
そこにあるのは正義感と使命感。そこが耕助とはじめの違いですね


犯人が死ぬという結末


「金田一」の名を冠する連続殺人の犯人は、追いつめられ真相を自ら明らかにし、そのままおおよそにして死ぬことがあります。むしろ多いです。一番多いのは自殺。次は事故。そこにあたって耕助とはじめの感性に決定的な違いがあります。


耕助はその犯人の死を悔やみません。それが余程思い入れのある人間でない限り。その繋がりが無い限り金田一耕助の人間に対する感覚の琴線は触れることはない。人づきあいも偏りがありますからね。
むしろ耕助は事件を明らかにするにあたり、「犯人が死ぬかどうか」なんて考えないのではないでしょうか。

『夜歩く』という事件があります。そこで犯人に対して罠を張るのですが、その罠がまた大変露骨で、一歩間違えば犯人が死にかねない罠を平気で張ったりするんですね。そうして事前に諭すようにそれを伝えて自白に導く。伝統なのか、はじめもたまにこれをやりますが耕助のやり方はもっと露骨です。ちなみにその犯人はその罠によって逆上したのが直接的な原因で自殺しました。
現代で実際にやったらえらいこっちゃ……

はじめはそこまで徹底した追いつめ方を行いません。そこまで事件を解決するにあたって冷徹になりきれないという感性があるのだと解釈します。推理力が卓越しているという点以外はすべてが平均以下の高校生ですから。
はじめも犯人を追いつめるために罠を張ります。しかしそれは犯人を陥れるためではなく、自分から認め、自白を導くためです。しかしそれは結果として犯人を追いつめ自ら散る結果を導いてしまう。ただ犯人を突き止めるだけでも同様です。そこではじめは本気で嘆く。他人事だとは思わず、自分の傷みのようにそれを感じてしまう。
なぜ犯人が死ぬということに対してこうまで感性に違いが出るのでしょうか。


生きる時代の価値観の違いが如実に見える


なぜそういう違いが出るのかというと、やはり生きてきた時代の価値観に揉まれてると考えるのが一番しっくりきますね。
耕助は大戦を経験しそのまま復員して探偵となった人間です。戦災直後の荒れた日本をその身ひとつでふらりふらりと行脚していった人間なんです。ああ見えて図太いし生きる術も心得ている。彼なりの徹底した仕業、が許される世界であったと、そういうことになるのでしょう。

しかしはじめは現代人です。平和ボケしたこの国で生まれ育ったごく普通の男の子でした。彼が持ち、耕助が持ち合わせない使命感と正義感。それは現代で現代の価値観の下育った環境が大きく影響しているのだと思えます。

戦災直後、耕助の時代に頻発した凄惨な難事件。それと同等の連続殺人に現代であたるはじめ。時代が違うだけでこうまでも感じ方が違うものなのかと読み比べながら思ったものです。





今でも想い返すように読んでいます。蝋人形城殺人事件なんかは三億円事件を絡めてたりとなかなか思い切ったことをするなぁと今更ながら思いますね。耕助シリーズは耕助が最初から最期までまさかの第三者だった八墓村とかお気に入りですね。あと明らかに事件に対して必死になっていた獄門島はやはり印象深いです。
きちがいじゃが仕方ない…

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by tuyuri_felnar | 2011-05-21 23:50

漫画やビデオゲームのライティングや小説執筆等を中心に活動してます。


by ななくさ つゆり