時には昔の話を。 カイ少佐と教導隊

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      思い出は背負うもの

       教導隊の今、昔






アラド「いやぁ~、今日もハードだったぜ。お疲れ俺!」
ゼオラ「はいお疲れ様」
アラド「オッス。今日も疲れてメシが楽しみだぜ」
ゼオラ「アラドは集中力が足りないのよ。だから無駄に疲れるし燃費も悪いんじゃない」
アラド「説教もいいけどたまには労ってくれよなぁ」
ラトゥーニ(……いいなぁ)



【設定BGM:紅の豚 『時には昔の話を』】
背景を知るとちょっとだけゾクっとする。魂が込められた歌はとても強いです。







カイ「…ったく、今になってこんなモンがだなぁ」
アラド「あり、少佐が珍しくボヤいてる」
ゼオラ「何か嫌なことでもあったのかしら」
カイ「おお。今日もお疲れさんだったな。明日に備えてゆっくり休めよ」
ゼオラ「はい」
アラド「どうしたんスか少佐。何か嫌なことでもあったんスか?」
カイ「あ?…ああ、いやなんでもない。たいしたことじゃないんだ。
   むしろ、ちょっとした残務処理がだな」
ラトゥーニ「なんでしたら手伝いますけど」
カイ「俺ひとりで十分だ。お前たちは休んでいい。
   なにしろ旧教導隊の時の古ぼけた資料が出てきてな…。ったく今更…」
アラド「何スかそれ。超見たいんですけど」
カイ「見てもガッカリするぞ。お前たちは飯でも食いにいけ」
ラトゥーニ「私も興味あります」
ゼオラ「私も、ちょっと…」
カイ「なに、お前たちもか?……さて、どうするかな」
ラトゥーニ「過去の教導隊の資料なら今後の参考にぜひ一読させてください」
カイ「そうか?そこまで言うならその書庫にあるからちょっくら見てくるといい」


アラド「うっわ埃っぽい」
ゼオラ「アラド、書庫の掃除サボったわね」
アラド「ゲッ、ばれた」
カイ「どうだ、十年来の資料の埃はすごいだろう。清掃も資料には触らんからな」
ラトゥーニ「で、何が出てきたんですか?当時の処分し損なった架空伝票ですか?」
カイ「そこの、ソレだ」
アラド「なんスかこれ。ミリタリー雑誌?……教導隊特集!?」
ラトゥーニ「『連邦の虎の子、特殊戦技教導隊の全てを』……すごい表紙のアオリ」
ゼオラ「少佐達はこんなこともやってたんですか?」
カイ「当時は連邦も必死でな。PTの戦術的運用理論と操縦技術体系の確立。
   なまじ優秀な人間ばかりを集めた集団なだけに宣伝にも格好の的になったわけだ」
アラド「え、じゃあひょっとしたら当時の写真とか……」
カイ「ああ、その中に当時の集合写真があった」
ラトゥーニ「ホントだ」
アラド「うわ少佐若けー!」
ゼオラ「馬鹿アラド!少佐は今でも若いわよ!」
カイ「はっは。かまわんかまわん。お前たちからしたら十分オッサンだぞ俺は」
ラトゥーニ「……右からギリアム少佐、ゼンガー少佐にレーツェルさん」
ゼオラ「一番左がカイ少佐ね……。少佐、この隣の方は?」
カイ「テンペスト。奴も優秀だった。後に色々あったがな」
アラド「ふーん」
ラトゥーニ「……」
アラド「真中のオッサンは誰ッスか?」
カイ「カーウァイ・ラウ大佐。発足当時の隊長だよ」
ゼオラ「へぇ、この人が……」
ラトゥーニ「……」
カイ「さ、思い出をほじくるのもそこまでにしておけ」
アラド「え、もうちょっと見たいッスよ」
ラトゥーニ「ううん。アラド、このあたりにしておこう」
アラド「え、そ、そうか?……まぁそういうなら」
カイ「雑誌は逃げやせん。いつでも見に来るといい」
ゼオラ「ひょっとして、この雑誌も誰かがわざととっておいたものなのですか?」
カイ「さぁ、な。だとしてもどこに仕舞ったか忘れてるんだから本末転倒だ」
ラトゥーニ「……」
アラド「それにしてもいいなぁ雑誌取材。見開き全部使った集合写真だぜ」
ゼオラ「なにアンタ。取材受けたいの?」
アラド「そりゃもうバッチリ取材受けて新生教導隊の集合写真をだな…」
ラトゥーニ「私達がいま報道され宣伝されても、軍の思う様な宣伝効果は無い気がする」
ゼオラ「カイ少佐にラミアさん、私にアラドにラト……」
ラトゥーニ「発足当時のメンバーの様な精鋭の貫禄を出す自信はないもの」
ゼオラ「まぁね」
アラド「写真も教導隊じゃなくて『キタムラファミリー集合!』って感じになっちまうな…。
    ギャグにしかなんねぇ」
カイ「おいおい。いくら若くてもお前らの挙げた戦果は一流以上だ。
   見てくれの宣伝よりもそれをわかってくれる人達がわかってくれればいいだろう」
アラド「そッスね。そうッスよね。いやぁまったくその通り!」
ラトゥーニ「そうですね」

ゼオラ「それでも、写真のみなさんはやはり男前でしたね」
カイ「カメラマンの腕がいいんだ。軍の広報もそれはやる気が滲み出る。
   納得の一枚にこぎつけるまでどれだけ時間がかかったか……」
ゼオラ「た、大変だったんですね」
カイ「ほんとになぁ。どいつも我が強く腕もあるんだが写真にはやたら奥手でな。
   大変だったんだぞ。写真一枚撮るだけでも」
ラトゥーニ「……なんだかわかるかも」
カイ「確か当時の写真が他にも残っているはずだが」
ゼオラ「写真ですか?これとは別に?」
カイ「ああ。それはミリタリ雑誌用の宣伝写真。
   確かプライベートで撮った写真がどっかアルバムで……」
アラド「なにそれ見てぇ超見てぇ!」
ラトゥーニ「プライベートでみんな写ってるのもあるんですか?」
カイ「確かそう記憶しとる」
ラトゥーニ(誰が撮ったんだろ……)
カイ「その時に撮った写真が……えー、さて、どこへしまったかな」
アラド「えぇ、無いんスか!?数少ない元祖教導隊の思い出でしょ」
カイ「ああ。大切にしようとどこかにしまって……そのままどうしたか」
アラド「あらあら」
カイ「当時は教導隊も発足したばかりでそれぞれ面識も浅くてな。
   しかもやたら多忙なものだからそういう機会もなかなか……。
   ……無いな。今度探しておくからもう今日はここまでだ」
アラド「えぇ~、マジッスか」
ゼオラ「仕方ないでしょアラド。ほら、ラトもご飯いきましょ」
ラトゥーニ「うん。……じゃあ少佐。自分達はこれで」
アラド「ほんとに手伝わなくて大丈夫スか?」
カイ「ああ。いいからお前たちは飯食ってゆっくり休め。
   明日も忙しいぞ」
アラド「うっす」
ゼオラ「お疲れ様です」
カイ「ああ。お疲れさん」


カイ「やれやれ。若いな。俺も年老いたか」
ラミア「……」
カイ「いたのかラミア」
ラミア「ええ、先ほどから。お疲れ様でござりまする」
カイ「ああ。勤務ご苦労」
ラミア「…………」
カイ「どうした?」
ラミア「写真なら一番下の引き出しの奥では?」
カイ「なんだ、知ってたのか」
ラミア「はい」
カイ「まぁいいけどな。見せてやってもよかったが、際限がないからな」
ラミア「……軍人の思い出は良いものばかりとは限らんです」
カイ「……」
ラミア「だから無理して振り返る必要はない。前だけを向いていれば楽になれる。
    そう、大昔にアクセル隊長がこぼしていたのを覚えておりゃます」
カイ「そうだな。それも一理ある」
ラミア「テンペスト・ホーカー。カーウァイ・ラウ。共にDC戦争で戦死。
    それはそういう過去も思い出してしまうから、でしょうか」
カイ「ああ。そういうこともあった。確かにあった」
ラミア「……」
カイ「だが、それでも昔は気心の知れた仲間であったし慕われた隊長だった。
   それも事実だ。俺みたいなオッサンにはそれでちょうどいい」
ラミア「近しい過去より遠い過去の方が印象深い、ということでありまするか?」
カイ「あまり深く考えなくていい。
   こういう写真があった。こういうことがあった。それを懐かしむだけだ」
ラミア「……写真一枚でもあればその感覚も理解できましょうか。
    自分にはまだ理解しかねます」
カイ「お前もアラドやゼオラ、ラトゥーニと同じでまだまだこれからだ。
   思い出もこれから作っていけばいい。今度みんなで写真でも撮るか」
ラミア「地球連邦キタムラファミリー隊の集合写真ですか」
カイ「はっはっは。冗談も巧くなったな。エクセレンが喜ぶぞ」




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by tuyuri_felnar | 2014-12-16 23:30

漫画やビデオゲームのライティングや小説執筆等を中心に活動してます。


by ななくさ つゆり