偲ぶ場所。想いを寄せて

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   カトライアのお墓参りへ繰り出したライ


          ふと目をやると

    そこにはまだ新しいカトレアの花…








ライ「カトレアの花…。来ているのか、兄さん」
エルザム「ああ、一足先にな」
ライ「兄さん…」

エルザム「機会とは重なるものだな」
ライ「兄さん。兄さんは」
エルザム「ああ。今の私はエルザムだよ。カトライアの前だ。ならば私は……」
ライ「そうか……」




【設定BGM: AKITO 『遠すぎた空』】





レオナ「エルザム様…。ライディース」
ライ「レオナ。君も来ていたのか」
レオナ「ええ。こういう機会でもないと、なかなか来ることも出来ないもの」
エルザム「すまないレオナ。世話をかける」
レオナ「いえ。あと、バケツに水をいれてきました」
エルザム「ありがとう。ほら、ライディース。レオナが行ってきてくれた」
ライ「ああ……」
エルザム「柄杓で水をお墓にかけてやるといい。それがこの国の習わしだそうだ」
ライ「わかった」



エルザム「ここに来るのも、もう何度目になるのか……」
ライ「……数えたことはないな。そして数えようとも思わない」
エルザム「そうか。その姿勢もまた、正しいものだ」
レオナ「ライディース。あなたの花束をよこして。お供えするから…」
ライ「すまない。いつもなら自分でするのだが…」
レオナ「いいわ。さっきも私がやったから。これくらいはさせて」
エルザム「ありがとう。レオナ」
レオナ「いいえ。私もカトライア様には生前に御恩を受けた身。
     何一つ及ばぬ私ではありますがこのくらいはしなければなりませんわ」




エルザム「ここは変わらないな。この場所も。カトライアも」
レオナ「エルザム様…」
エルザム「当たり前のように緑があり、清々しい空気があり、鳥が飛ぶ。
      そしてカトライアの墓がある」
レオナ「……」
エルザム「ここに来れば、こうしてカトライアと私を繋ぐ形がある事を確認できる。
      そしてここで手を合わせることが出来る。それだけでも私は幸せ者だ」
ライ「……」
エルザム「ライ。レオナ。お前たちが今日までカトライアを慕い、
     こうして手を合わせてくれることに私は深く感謝を述べたい」
レオナ「いえ、とんでもございませんわ」
ライ「自分がそうしたいからしているまでだ。別に兄さんに為じゃない」
レオナ「ライディース…!」
エルザム「そうか。それもまた正直な気持ちなのだろう。私はそれで構わない」
ライ「……ああ」

エルザム「さっき、ここは変わらないと私は言ったな」
レオナ「え、ええ」
エルザム「なら変わったのは、我々の方か」
ライ「え…?」
エルザム「幾つかの戦いを経て我らはここにいる。
      だが、カトライアはここで今も昔も穏やかに微笑んでいると思う」
レオナ「…そうかもしれませんね。カトライア様はいつも柔和な笑みで
    みなに元気を与えておりましたから」
ライ「ああ。そうだったな。いつも、いつも……」
エルザム「時は死者を『そこ』に留める。ここにいるカトライアはあの時のまま、
      今はお前たちの参拝を喜び、柔らかく微笑んでいることだろう」
ライ「兄さん……」

エルザム「ここは時が止まった場所なのだ。この場所、この空間。カトライア。
     そしてその様な場所があるという事は生きる者にとって幸せな事なのだよ。
     それがどういうことなのかわかるか?」
レオナ「……いえ」
エルザム「人は変わる。だが、変わらないものもある。
     そしてそれがあれば、人は昔の自分に会えるのだ」
ライ「昔の自分…」
エルザム「ライ。それを過去に引き摺られていくだけの哀れなものだと思うか?」
ライ「……いや、そうは思わない」
レオナ「……」
ライ「過去を見つめ直すことで見えることがある。
   過去に引き摺られていた哀れな男。それは意固地になっていた昔の俺の事だ」
エルザム「自分を卑下しなくていい。それはあって当然のことだったのだ。
     だが、多少の衝突を経て今の様な関係を取り持つことが出来た。
     今はそれでいい」
ライ「……そうだな。兄さん」
エルザム「レオナもすまぬな。DC戦争の頃はお前もよほど気を揉ませたことだろう」
レオナ「いえ、ライディースも意固地ですが馬鹿ではありません。
     きっといつかは落ち着いてお二人わかりあえると最初から信じておりました」
エルザム「ありがとう。そして、そのひとつのけじめの形としてもここは在る。
      これからも機会あれば、ここに来て顔を見せてやってくれ。
      カトライアも喜ぶだろう。」
ライ「ああ。わかっている」
レオナ「ええ。勿論でございます」





エルザム「さぁ、用事はここまでだ。クロガネに帰り、みなで食事をしよう。
      今日は特別メニューを考えているのでな」
レオナ「はい、喜んで」
エルザム「今日はライも来るだろう?」
ライ「…そうだな。今日ぐらいはいただかせてもらおう」
エルザム「それでいい。30年物のワインも用意してある。
      これからも共に歩むための一杯としようではないか」


エルザム「それぞれグラスに想いをこめて、カトライアに杯を掲げよう」
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by tuyuri_felnar | 2015-01-22 01:58

漫画やビデオゲームのライティングや小説執筆等を中心に活動してます。


by ななくさ つゆり