想いをのせる手紙

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   飛び立つ妹。送り出す兄。
  
  去る妹の後ろ姿に沸き立つ想い
   それを一通の手紙に籠めた








大きな戦いが終わり、二つの世界に平穏が訪れました。
それぞれが自分たちの生活へと帰っていき、駆や天音もまた日常へと還っていきます。
アースティアでは再度世界の為にとその身を立てることを誓ったキャオス達。
ブラスは改めてエルンスト機関と和解し、その一助になる事を決心します。

「ではシャルはどうするのです…?」
ふと尋ねるキャオスの言葉に、ブラスは迷う事もなく安らかに述べました。
「あの子なら大丈夫だ。もう子どもじゃない。自分の道は自分で決めることだろう」
彼女の選択肢は彼女自身に任せたい。
彼女の意思を改めて尊重する兄の姿がそこにはありました。

そしてシャルは物語の最後に駆達の前へ現れます。仄かに見え隠れする好意を寄せて。
駆たちのいる世界へと発つ事を決めたシャルをブラスは止めません。柔らかく微笑み、彼女の意思を兄として見届けました。そしてもしブラスがシャルを地球へと送り出していたとしたら、こういうやりとりがあったのかもしれないな、というお話です。



【設定BGM:尾崎豊 『I love you』】
不朽の名曲ですね。チョイスした理由があって、この名曲は今回のSSをちょちょいと書く際に少し意識したJR東海ファイト!エクスプレスのcmソングだったりします。







天音「シャルさん」
シャル「どうしたの?」
天音「これ、シャルさんのかな?お部屋の前に落ちてたんだ」
シャル「え?……あ、そうみたい。ありがとね、天音。
    これを落としちゃうなんてだらしないわ、私」
天音「それ、ひょっとして手紙かな」
シャル「…ええ。手紙よ。とても素敵な手紙」
天音「誰から?」
シャル「お兄様よ」
天音「ブラスさんからなの?今こっちに来てるの?」
シャル「ううん。これはね、私が地球に行こうと出発した時、
    お兄様が私に預けてくれた手紙なの」
天音「へえ~。何が書かれてるの?」
シャル「それは秘密。いくら天音でもね」
天音「そっか。秘密なら仕方ないよね」
シャル「ごめんなさいね天音」
天音「ううん!じゃあ僕、青空ゲンキーズの応援に行ってくるから」
シャル「いってらっしゃい。タオルと水筒は?ちゃんと詰めた?」
天音「大丈夫だよ。ちゃんとバッグに詰めたから」
シャル「あ、タオル一枚しかいれてないじゃない。あと二枚いれときなさい。
    今年も陽射しがすごい強いんだから」
天音「そっか。……よし、これでいいかな?」
シャル「うん。大丈夫。じゃあいってらっしゃい。休む時は木陰で体温を落とすのよ」
天音「は~い。いってきます」 パタン
シャル「……手紙、か。兄様、元気にしてるかしら。
    キャオス達と一緒にいるんだから大丈夫よね」
シャル「去り際に渡してくれた手紙だもの。大切に持っておかなくちゃ」

シャル「兄様。こんな私でも少しは落ち着くことが出来たかしら。
    手紙の通りにいるかどうかはわからないけれど、それでも私なりに…」

駆「どうしたよ、そんな寂しそうな顔して」
シャル「駆……」
駆「ホームシックか?」
シャル「ううん。…見た?この手紙」
駆「見てない。ブラスさんからなんだってな。
  ……本当に、良い人だと思うぜ」
シャル「手紙、見る?」
駆「いや、いい」
シャル「なぜ?アンタなら見せてもいいと思ってるんだけど」
駆「……見なくてもさ、だいたいわかるんだよ。書いてあること」
シャル「そ、そうなの?」
駆「ああ。俺も年の離れた弟がいるからな」
シャル「……」



我が妹、シャルへ


この手紙を開いてくれてありがとう。地球の暮らしはどうだろうか。君が地球に行ってしまったということで、それに纏わる私の想いを幾つか綴ろうと思う。

まず、地球へ行くと自分の内で決心したこと。これを私は素直に喜びたい。自分の将来にかかわる意思を明確に形とすることが出来たこと。これは実に素晴らしいことだ。
君が地球に行くという決心を目の当たりにした時、正直な所その大胆さに多少の躊躇はあったものの、私の中ではシャルの成長を目の当たりに出来たことの喜びの方が遥かに大きかった。シャルの意思はシャルだけのもの。それを大切にしてほしい。


だから
君の想う様に、納得がいくようにやりなさい。

そして、アースティアに置いてきた人達に胸を張れるように、更なる素敵な女性となってくれることを望む。安心して、自分の気持ちを信じて行動してくれ。


シャル。私はいつでも君の帰りを待っている。ふと君が寂しくなったり、家を恋しがることがあれば、気軽に帰ってきなさい。その気持ちに応えられるよう、私はいつでも門戸を開き、アースティアでのお前の居場所で在り続けるつもりだ。
いつか君が地球に居つき、その世界で安定した時が来ても、この手紙を時折思い出してくれると私はそれだけで嬉しい。この手紙はお前の大切な自立の証だから。

お前の兄、ブラスより


追伸
駆くんと天音くんによろしく。彼らならきっと君を大切にしてくれるだろう
いつか私も地球へ赴こうか。個人的な興味で。地球を知り、見聞を広めるために。
その時は観光案内をよろしく頼むよ
 』



駆「手紙は見てないけどさ、多分喜んでると思うんだよ、ブラスさん」
シャル「……」
駆「確かに複雑な気持ちもあるだろうけど、な」
シャル「……そうね」
駆「……その手紙、大切にしまっとけよ。
  それがいい。絶対、そうした方がいい」
シャル「うん。わかってる」
駆「……」
シャル「…………駆」
駆「何だ」
シャル「ごめんね。なんだか気を遣わせちゃったみたい」
駆「ばか。今更なに言ってんだよ。俺は何もしてないぜ」
シャル「でも…」
駆「いいから。俺は何もしてない。俺、頭の運動はすっげー苦手だから」
シャル「…それは知ってる」
駆「だろ。あははは」
シャル「くす…。もう、このタイミングで笑うなんて折角の空気が台無しよ」
駆「まぁまぁ。それも俺らしいってことで」
シャル「……でも、なんか気分がスッキリした。ありがと」
駆「どういたしまして。さ、飯にしようぜ。腹減ったぜ」
シャル「オッケー。好きなもの作ってあげるわよ」
駆「さっすが。頼れるぜ」





NEOの作中でもブラスさんは歪みなく淀みなく良いヒトだったなあ


by tuyuri_felnar | 2015-01-02 05:00

漫画やビデオゲームのライティングや小説執筆等を中心に活動してます。


by ななくさ つゆり